古文の学習の中で、敬語を苦手とする人は多いと思います。
敬語が苦手な場合、どうすればいいのかについて、
「古文の敬語が苦手! どうすればいい? ⑴」(本記事)
「古文の敬語が苦手! どうすればいい? ⑵」
のふたつの記事で説明をします。
1 敬語が苦手である原因
敬語が苦手である原因は、大きくふたつ考えられます。
その原因を探るために、次の問いに答えてみてください。
問1 尊敬語と謙譲語の違いを説明しなさい。
問2 「言ふ」の尊敬語と謙譲語を、それぞれ2つずつ挙げなさい。
どうでしょうか。スムーズに答えられましたか?
自分なりに答えを考えてから、正解を読んでください。
では、正解です。
問1:
尊敬語は動作主に対する敬意を表す敬語で、謙譲語は動作の受け手に対する敬意を表す敬語である。
問2:
「言ふ」の尊敬語:のたまふ・仰す・のたまはす など。
「言ふ」の謙譲語:申す・聞こゆ・奏す・啓す・聞こえさす など。
この問いは、問1が、「敬語の種類」についての知識を尋ねたもので、問2は、「主要な敬語」についての知識を尋ねたものです。
そのため、問1が不正解だった人は、「敬語の種類」についての知識が不足しているということになり、問2が不正解だった人や、一部しか答えられなかった人は、「主要な敬語」についての知識が不足しているということになります。
つまり、敬語が苦手である原因は、
⑴「敬語の種類」についての知識不足
⑵「主要な敬語」についての知識不足
となります。
ここまで読んできて、
〈知識不足〉が原因なんて、今さら、そんな当たり前のことを言われてもなあ…、もっと簡単に使える裏技でも説明してくれるのかと思っていたのに…。
と感じている人もいるかもしれません。
けれども、敬語を苦手とする最大の原因は、まさに〈知識不足〉なのです。
なぜなら、敬語は、基本的に知識問題だからです。
2 敬語は知識問題である!
敬語が苦手という人に、最初にしてほしいことは、敬語に対する認識を改めることです。
持ってほしいのは、「敬語は知識問題である!」という認識です。
敬語を理解する上で、絶対に必要になるのが、「敬語の種類」についての知識と、「主要な敬語」についての知識です。
例えて言えば、これらは、算数における「かけ算九九」のようなものです。
九九を覚えなければ、算数や数学の計算問題は解けませんね。
敬語の問題を解く際にも、「敬語の種類」と「主要な敬語」を覚えておかなければなりません。
敬語が苦手という人は、これらを十分に覚えないまま、問題を解こうとしているのではないでしょうか?
敬語を苦手としていた、ある生徒さんは、本文の文脈から、尊敬語か謙譲語かを考えて決めている、と言っていました。
しかし、この考え方は根本的に間違っています。
なぜなら、尊敬語か謙譲語かは、ごく一部の言葉を除いて、文脈に関係なく、初めから決まっているからです。
決まっている以上、それは、覚えておかなくてはなりませんし、逆に、覚えてさえいれば、確実に答えられるのです。
このように、まずは、「敬語は知識問題である!」という認識を強く持ちましょう。
その上で、必要な知識を蓄えましょう。
3 「敬語の種類」についての知識
ふたつの知識のうち、まずは、基本となる「敬語の種類」についての知識をまとめます。
古文の敬語に出てくるのは、次の3種類です。それぞれの特徴と一緒に示すと、次のようになります。
①尊敬語:話し手が、動作主への敬意を表す。
②謙譲語:話し手が、動作の受け手への敬意を表す。
③丁寧語:話し手が、話の聞き手への敬意を表す。
それぞれの敬語の名前と、敬意を表すべき相手(=「動作主」「動作の受け手」「話の聞き手」)をしっかりと覚えましょう。
ここで重要なのは、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の違いは、誰への敬意を表すか、という点にあるということです。
その部分だけを、もう一度、挙げると、
①尊敬語:動作主への敬意
②謙譲語:動作の受け手への敬意
③丁寧語:話の聞き手への敬意
となります。
この部分を、必ず覚えましょう。
ちなみに、「動作主」とは〈動作をする人〉、「動作の受け手」とは〈動作を受ける人〉です。例えば、「与ふ」という動作について考えてみると、
動作主:「与ふ」という動作をする人=(何かを)与える人
動作の受け手:「与ふ」という動作を受ける人=(何かを)もらう人
となります。
「動作の受け手」というのが分かりにくい人は、「動作主」の反対側にいる人、と考えるとイメージしやすいと思います。
また、尊敬語・謙譲語・丁寧語は、現代の敬語にもありますが、現代の敬語と古文の敬語の違いが気になる人は、「古文の敬語は、現代の敬語と違うの?」を読んでみてください。
4 中間のまとめ
記事が長くなるので、一旦、ここまでの内容をまとめます。
①「敬語は知識問題である!」と認識する。
②「敬語の種類」を覚える。